「思考の整理学」(外山滋比古)

自分は飛行機型人間を育てているのだろうか

「思考の整理学」(外山滋比古)
 ちくま文庫

折にふれて
読み返しているエッセイ集です。
それも冒頭の一編「グライダー」を、
何度となく読み返しています。
教職に就いていて、
常に問題意識を持ち続けたいと
思ってのことです。

本書で著者は、学校教育について
苦言を呈しています。
「学校の生徒は、先生と教科書に
 ひっぱられて勉強する。
 自学自習ということばこそ
 あるけれども、
 独力で知識を得るのではない。
 いわばグライダーのようなものだ。
 自力では
 飛び上がることはできない。」

グライダーと飛行機の違いについて、
「グライダーが音もなく
 優雅に滑空しているさまは、
 飛行機よりもむしろ
 美しいくらいだ。
 ただ、悲しいかな、
 自力で飛ぶことができない。」

と述べています。

数年前から報道されているように、
私の住む秋田県は、
全国学力・学習状況調査において、
小学生・中学生とも
全国トップレベルを維持しています。
言語活動の充実のための施策等、
全国に紹介されている
授業改善の取り組みの事例は
多々あります。
「今日のめあて」「今日のまとめ」などの
カードを黒板に貼り付け、
授業のねらいとまとめを明確にする。
授業中の討論活動を活発化させるために
「話し合い活動」を表すカードを
黒板に提示する。
確かに効果の上がる方法です。

でも、ときどきこうした
学びのための手立ては、
実は子どもたちを
ひっぱるためのものであって、
飛行機型人間を育てることには
必ずしも役立っていないのでは
ないかという疑問を
感じてならないのです。

高校教育に目を転じると、
秋田県のセンター試験の平均点は、
全国では下位の方です。
義務教育段階ではトップレベルの
秋田の子どもたちが、高校では
学力を伸ばせないでいるのです。
中学校と高校、地方と首都圏では
受験者の状況が違いますので、
単純な比較はできません。
しかし、高校生の学力低下
(全国偏差値の学校平均が
入学時からじわじわと下降している)を
目の当たりにしていると、
やはり秋田県は
自力で学ぶ力を持った子どもを
育てていないのではないかと
思ってしまうのです。

自分は飛行機型人間を
しっかり育てているか、
グライダー人間ばかり
つくっていないか、
いつも自らに問いかけています。

内容の紹介が全くできませんでした。
本書は子どもにとっても大人にとっても
生き方の参考になる一冊です。
中学校2・3年生に特にお薦めします。

(2020.4.27)

Chalo GarciaによるPixabayからの画像

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